脈拍と心拍数は何が違う?ズレる原因と病気のサインを徹底解説
日常会話や健康管理アプリでは同じ意味として扱われがちな「脈拍」と「心拍数」。しかし、医療現場やバイタルサインの計測において、両者には明確な定義の違いが存在します。健康な状態であれば2つの数値は一致しますが、体内である種の異常が起きると、心臓が打っている回数と手首などで触れる拍動の数に明確な「ズレ」が生じます。
スマートウォッチの普及によって手軽にバイタルデータを可視化できるようになった2026年現在、両者の違いや数値が一致しないリスクを正しく把握しておくことは、早期の体調異変に気づくための必須知識です。基本の定義から数値の乖離が示す病気のリスク、正しい測定法までを体系的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:心拍数は「心臓が拍動した回数」、脈拍は「血液が全身の動脈に伝わって拍動として触れた回数」を指す。
- 要点2:心房細動などの不整脈が起きると「脈拍欠損」が生じ、心拍数より脈拍数が少なくなる現象が起きる。
- 要点3:スマートウォッチと医療用機器では計測原理が異なるため、違和感や動悸がある場合は手首での触知と早期受診が鉄則となる。
脈拍と心拍数の決定的な違い|なぜ同じ数値にならないことがあるのか
「心拍数」とは、心臓(主に左心室)が1分間に収縮・拡張を繰り返した回数のことです。一方の「脈拍(脈拍数)」は、心臓の収縮によって送り出された血液の圧力波が、末梢の動脈壁を押し広げて生じる拍動の回数を指します。
通常、心臓から1回分の血液が力強く押し出されるたびに動脈へ波が伝わるため、「心拍数 = 脈拍数」となります。しかし、心臓の拍動が極端に弱かったり、タイミングが不規則になったりすると、血液の波が手首や首元の血管まで十分に届きません。その結果、心臓は動いているのに手首では脈が触れない状態が生じ、数値のズレが発生します。
看護や救急の臨床現場において、心拍数と脈拍数を厳密に区別して記録するのは、この「血液が実際に末梢まで届いているか(有効循環が保たれているか)」を評価するためです。

【徹底比較】心拍数・脈拍の基準値とメカニズムの違い
| 項目 | 心拍数(Heart Rate) | 脈拍数(Pulse Rate) | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| 定義 | 心臓が1分間に拍動する回数 | 末梢動脈で1分間に感知される拍動数 | 発生源(心臓)と到達点(血管)の違い。 |
| 安静時の正常値 | 60〜100回/分(成人) | 60〜100回/分(成人) | 健康時は同値。50回台でも無症状のアスリート心臓なら正常。 |
| 主な測定方法 | 心電図(ECG)、聴診器、胸部心拍ベルト | 橈骨動脈の触知、光電式容積脈波(PPG) | 心電図は電気信号、触知は物理的圧力を捉える。 |
| 乖離が起きる原因 | 心房細動、期外収縮、重度の心不全など | 末梢血管の狭窄、血圧低下、循環不全 | 心拍数 > 脈拍数の現象は「脈拍欠損」と呼ばれる危険信号。 |
心拍数と脈拍が一致しない原因|「脈拍欠損」が示す重大なサイン
心拍数と脈拍数が一致しない最大の原因は、不整脈によって生じる「脈拍欠損(パルスデフィシット)」です。通常は心臓が収縮すれば必ず血液が全身へ送られますが、不整脈が起こると心臓が空打ち状態になり、脈が手首まで届かなくなります。
代表的な疾患および原因には以下のようなものがあります。
- 心房細動(AFib):心房が毎分400〜600回ほど小刻みに震え、心室へ不規則に電気信号が伝わる状態。心室が十分に血液を溜め込む前に収縮してしまうため、拍出量が極めて少ない「空打ち」が混ざり、脈拍欠損を引き起こします。脳梗塞や心不全のリスクを高める代表疾患です。
- 期外収縮(期外拍動):本来のリズムより早いタイミングで心臓が収縮する現象。血液の充満が不十分なまま収縮するため、「脈が1拍飛ぶ(抜ける)」感覚を自覚することがあります。
- 末梢動脈疾患・重度の血圧低下:動脈硬化による血管の狭窄やショック状態によって、物理的に末梢への血流波が減衰しているケースです。
安静時に「心電図や胸の音では1分間に90回打っているのに、手首の脈を測ると70回しかない」といった大きな乖離がある場合は、自覚症状が乏しくても循環器専門医の精査を受ける必要があります。

【実態検証】スマートウォッチの心拍計と手首の脈拍測定の違い
Apple WatchやGarmin、Pixel Watchといったスマートウォッチの普及に伴い、「時計の数値と自分で測った脈拍が違う」という相談が医療機関でも増加しています。この背景には、デバイスが採用している計測の仕組みが関係しています。
一般的なスマートウォッチの裏蓋には緑色LEDと受光センサーが搭載されており、これは「光学式容積脈波記録法(PPG)」と呼ばれます。血液中のヘモグロビンが緑色の光を吸収する特性を利用し、心臓の拍動に伴う毛細血管の容積変化(血流量の波)を光学的に読み取っています。つまり、名称としては「心拍数」と表示されていても、工学的なアプローチとしては「皮膚表面の脈拍」を測定しているのが実情です。
一方、一部のハイエンド機種に搭載されている「心電図(ECG)機能」は、時計裏面とリュウズ部分の電極で微弱な生体電気信号を記録するため、こちらは本来の意味での「心拍数」を計測しています。
手首の装着バンドが緩んでいたり、激しい運動で腕を振ったり、寒冷刺激で末梢血管が収縮していると、光学センサーの数値は乱れやすくなります。「数値がおかしい」と感じた際は、落ち着いた環境で手首の動脈に直接指を当てて検脈するアナログな確認が極めて有効です。
自宅でできる正確な脈拍の測り方(手首・橈骨動脈)
正しい脈拍の測り方を把握しておくことで、スマートウォッチの誤検知か実際の不整脈かを冷静に見極められます。
- 5分ほど座って安静にし、呼吸を整える。
- 手のひらを上に向け、反対の手の人差し指・中指・薬指の3本を、親指側の手首の骨の出っ張り内側(橈骨動脈)に軽く当てる。
- 親指は自分自身の脈を拾ってしまうため使わない。
- 規則正しいリズムであれば「30秒間の拍動数を数えて2倍」、リズムが飛んだり不規則な場合は「必ず60秒間フル」で測定する。
頻脈・徐脈・脈の乱れ|注意すべき病気と危険な自覚症状
成人の安静時脈拍数は1分間に60〜100回が正常範囲です。この範囲から逸脱している場合、それぞれ「頻脈」「徐脈」と分類され、背景に隠れた疾患の鑑別が必要です。
頻脈(1分間に100回以上)で疑われる病態:
発熱、脱水、貧血、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)、パニック発作のほか、発作性上室性頻拍や心室頻拍などの重篤な不整脈が挙げられます。カフェインやアルコールの過剰摂取、精神的ストレスでも一時的に上昇します。
徐脈(1分間に50回未満)で疑われる病態:
長年持久系スポーツを行ってきた人(スポーツ心臓)では50回未満でも問題ないことが多いですが、めまいやふらつきを伴う場合は洞不全症候群や房室ブロックといった刺激伝導系の障害、甲状腺機能低下症などが疑われます。
特に、「脈が不規則に飛ぶ」「胸が締め付けられるような痛みがある」「息切れがひどい」「意識が遠のく感覚がある」といった症状を伴う拍動の乱れは、心筋梗塞や重度の不整脈の前兆である可能性があるため、速やかな受診が求められます。

一般に知られていない盲点とネットの誤解
インターネットやSNS上では、脈拍や心拍数に関して誤った解釈が散見されます。代表的な2つの誤解を正しておきましょう。
誤解1:「安静時心拍数が低いほど無条件に長寿で健康的である」
持久系アスリートの徐脈は心機能の高さを示しますが、運動習慣のない一般成人が突如として脈拍40回台などに低下した場合、心臓のペースメーカー機能が衰えている危険性があります。「低ければ低いほど良い」わけではありません。
誤解2:「スマートウォッチで異常が出なければ不整脈は絶対にない」
光学式心拍計は日常のトレンド把握には優れていますが、発作的に数秒〜数分だけ現れる不規則な期外収縮や微弱な細動をすべて捉えきれるわけではありません。強い動悸を感じているにもかかわらずウォッチ上の数値が平穏であっても、違和感が続く場合は医療機関でのホルター心電図(24時間心電図)検査を優先してください。
【プロの結論】受診を検討すべき人・様子を見てよい人の判断基準
脈拍の異常に直面した際、以下の明確な基準で行動を判断してください。
- 直ちに循環器内科を受診すべき人:
- 脈を触れたときにリズムが完全にバラバラで、手首の脈が何度も抜ける。
- 安静時の脈拍が120回以上、または45回未満で推移している。
- 脈の乱れと同時に「失神」「強いめまい」「胸痛」「呼吸困難」がある。
- 数日間のセルフモニタリングで様子見が可能な人:
- 睡眠不足や過労の翌日に、たまに1拍だけ脈が飛ぶ感覚があるが胸痛や息切れはない。
- スマートウォッチの数値が一時的に乱れたが、手首での実測検脈は規則的で体調も万全である。
【脈拍 と 心拍 数 の 違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:血圧計に表示される「脈拍」とスマートウォッチの「心拍数」は同じものですか?
A1:どちらも基本的には腕や手首の血流変化から読み取った「脈拍」を測定しています。表示上の名称が「心拍」となっていても、胸部に電極を貼らないタイプの機器は末梢の脈波を計測しているケースがほとんどです。健康であれば両者は同じ数値を示します。
Q2:緊張したときに脈が速くなるのは心拍数と脈拍のどちらが増えているのですか?
A2:両方です。緊張やストレスを感じると交感神経が優位になり、脳からの指令で心臓の拍動(心拍数)が増加します。それに伴い、全身へ送り出される血液の波(脈拍数)も同時に増加します。
Q3:検脈で「脈が飛ぶ」と感じるのは心臓が止まっているのですか?
A3:心臓が完全に停止しているわけではありません。多くは「期外収縮」という、通常のタイミングより早く心臓が小さく収縮する現象です。十分な血液が溜まる前に拍動するため手首まで圧力が届かず、まるで1拍休んだように感じられます。健康な人にも起こり得ますが、頻発する場合は検査が必要です。
まとめ:数値の違いを正しく理解し、日々の健康管理に役立てる
心拍数は「心臓そのものが動いた回数」、脈拍数は「全身の血管へ届いた拍動の回数」という明確な違いがあります。両者が綺麗に連動している状態こそが、心臓が正常に機能し、血液が末梢までしっかりと循環している証拠です。
ウェアラブルデバイス全盛の現在だからこそ、画面上の数値だけに頼るのではなく、時には自分自身の手首に指を添えて脈のリズムや強さを確かめる習慣が役立ちます。脈の乱れや数値の乖離を放置せず、自身の体の状態を正確に読み解く知識として役立ててください。 (出典: 脈拍 と 心拍 数 の 違い(Yahoo!ニュース))